月に向かってPRせよ!—映画『フライミートゥーザ・ムーン』から考える広報戦略

先日、映画『フライミートゥーザ・ムーン』を観ました。人類初の月面着陸をめぐるアポロ計画。その裏側では、科学者や技術者だけでなく、PRのプロたちが奮闘していたことをご存じでしょうか?
この映画では、マーケティングやプロモーション、広告(アドバタイズメント)、パブリックアフェアーズなど、現代の広報にも通じる要素が随所に登場します。登場人物たちは、「マーケティング」「パブリックアフェアーズ」「アドバタイジング」などの言葉を使い分けており、それが各登場人物の価値観を表していて演出として面白いのですが、字幕ではこれらの言葉がすべて「PR」と訳されておりました(*)。ちゃんと原文通りに使い分けて欲しいと思いつつ、日本における定義の曖昧さを踏まえた絶妙な翻訳とも言えますかねぇ。
(*)主人公は終始「パブリックアフェアーズ」と発言。
政府のエージェントは「マーケティング」、NASAの男性は「アドバタイジング」と表現してたはず。
また、アポロ計画の成功には、「どうやって世の中を巻き込み、熱狂させるか?」という視点が不可欠でした。映画の中にも、「宇宙飛行士をスポークスパーソンとしてヒーローに演出する」「消費財などとのタイアップ商品を作りまくる」「議員を視察に呼び、テレビカメラの前で絶賛させる」「(良いかどうかは別として)失敗時に備えたプランBの映像素材を用意しておく」など、さまざまなPR的なアイデアが散りばめられており、「もし現代ならどうするか?」と想像しながら観るのも一興です。
また、主人公が広報の仕事を「詐欺の才能を生かせる仕事だと思ったから選んだ仕事」というくだりもあって、ほほう、と思わされます。
技術だけではなく、世論や感情を動かす力があってこそ、大きなプロジェクトは成功する。しかし、その裏で支える人たちの理解や思惑はさまざま。そんなPRの本質!?を、月を目指した彼らから学べるかもしれません。