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【参加レポート】PRSJ企業部会フォーラム:「進化する広報の役割とコミュニケーションを考える」

2025年3月25日、PRSJ(公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会)企業部会フォーラムに参加してきました。今回のテーマは「進化する広報の役割とコミュニケーションを考える」。登壇者の皆さんの知見から、これからの広報・PRのあり方について、多くの示唆を得ることができました。


🏢 登壇者とテーマの概要

  • YKK 伊深さん:理念の継承と実践をグローバル展開する中でどう浸透させるか
  • 井口さん:PR4.0へのシフト、社会における広告と広報の位置付けの変化
  • 國學院大学 河先生:パブリックディプロマシーや地域活性とPRの関係性、消費社会の変遷と広告/広報の位置付けの変化
  • 第一生命 坂本香織さん:モデレータ

それぞれの発表が、単なる「PR施策」の枠を超えて、企業の価値創造、社会との対話、アイデンティティ形成といった本質的な課題に向き合っていたのが印象的でした。


💡 1. PR 4.0時代の「企業価値」とは?

井口さんの講演では、「PR 4.0」の時代における企業の役割とコミュニケーションの変化について語られました。

  • 2.0:バルセロナ原則で「成果を見せよ」と言われた時代
  • 3.0:ソーシャル視点が重視され、ステークホルダーの共感を得る時代
  • 4.0:今後求められるのは、「企業価値」をいかに定義し、伝えるか

特に「ソーシャルバリューブランディング」というキーワードが印象的でした。企業が業績だけでなく、社会的な価値をどのように生み出し、発信していくかが問われています。企業は単にモノを売るのではなく、「共感される存在」でなければならない時代になっています。


🌏 2. グローバルでの「理念浸透」のリアル

YKKの伊深さんは、創業社長が提唱した理念をグローバルに浸透させるための実践について紹介。海外事業が大半を占める中で、理念の継承と現場への浸透をどう実現するか——この課題に日々取り組んでいるそうです。

  • 頻度高く、コツコツと理念を浸透させる
  • コンテンツの工夫を重ね、社内外の関係者に「自分ごと」として捉えさせる

ただし、「やりすぎには注意」とのこと。理念を押し付けるのではなく、現場の文脈に寄り添った形で価値観を共有していくバランス感覚が重要です。


📰 3. メディアの変遷と「テーマ起点のアプローチ」

「メディアの構造は大きく変わってきている」と指摘したのは井口さんです。

  • かつてはメディアごとに視聴者属性が固定されていた
  • 今では、オウンドメディアとアーンドメディアの位置付けが大きく変化
  • 「メディア起点ではなく、テーマ起点でアプローチすべき時代」に移行している

今後は、単にメディアに露出することを目的とするのではなく、「自社が掲げるテーマで共感するコミュニティに刺さるコンテンツ」を届けることが求められる、という指摘は非常に納得感がありました。


🎯 4. 「アジェンダ設定力」が求められる時代へ

今回のフォーラムで繰り返し出てきたのが、「アジェンダ設定力」の重要性です。

  • かつては、メディアが「アジェンダ設定」の役割を担っていた
  • 今後は、現場を知っている企業や広報がアジェンダを設定する時代

つまり、広報には「ジャーナリスト的観点」が求められているということです。自社の強みや課題を踏まえ、社会との接点を見出し、共感を生むテーマを提示できるか——これが今後の広報の鍵を握ることになりそうです。


📚 5. 企業アイデンティティと「社会からの期待」

河先生の講演では、「企業のアイデンティティ」の成熟度と社会からの期待の関係について考えさせられる内容がありました。

  • 企業の存在意義が「変わらないもの」から「社会からの期待を反映するもの」に変化
  • 消費社会の変遷の結果、広告優位(商品を作って世に出せば売れる時代の象徴)から共感重視になっている
  • ステークホルダーという言葉の「ステーク(掛け金)」は、商売を前提とした関係者を意味する
  • しかし、今後はそれを超えて、より広範な社会と関わる必要がある

「組織のアイデンティティの軸となるマインドは、広報が育てるもの」という言葉には、広報の本質的な役割を再認識させられました。


✅ 【気づき】フォーラムを通じて得たポイント

  1. 「アジェンダ設定力」を広報が担う時代に突入している
  2. 「企業価値」の再定義とソーシャルバリューブランディングの必要性
  3. 理念浸透のためには「頻度高く、コツコツと」実行することが重要
  4. メディアの構造変化に伴い、「テーマ起点」のアプローチが求められる
  5. 消費社会の変遷に伴い、広告やコミュニケーションに求められることが変わっている

📢 【ネクストアクション】これからの広報に求められること

このフォーラムでの議論から、今後の広報活動の方向性として以下のポイントが浮かび上がりました。

  • 「アジェンダ設定」を意識したテーマ開発
  • 社内外のステークホルダーとの共感を軸にしたブランディング
  • メディアだけでなく、コミュニティとの関係性を強化する

皆さんの組織では、広報の役割についてどのように考えていますか?
今後の広報戦略を見直す際のヒントとして、ぜひ参考にしてみてください!