自治体広報は「情報発信」ではなく「政策実装」の機能である――早稲田大学公共政策カレッジで講義を担当して

先日、稲継裕昭先生にお声がけいただき、早稲田大学 WASEDA NEOで開講されている「早稲田公共政策カレッジ」にて講義を担当しました。
早稲田公共政策カレッジは、自治体職員や行政関係者だけでなく、公共政策に関心を持つ民間企業やNPOなど、多様な立場の社会人が集い、政策立案や行政実務について学ぶ実践的なプログラムです。
私が担当したのは、
「自治体広報特論―政策発信のための広報実践入門」
という講義です。
自治体広報と企業広報は同じではない
普段私は、企業やスタートアップ、業界団体などの広報を支援することが多くあります。
一方で、自治体や行政の広報は、企業広報とは目的も役割も異なります。
企業であれば、事業成長やブランド形成、採用などが重要なテーマになります。
自治体であれば、政策への理解を深めてもらうこと、市民の協力を得ること、地域への参加を促すことなど、政策を実現するためのコミュニケーションが重要になります。
そのため、「企業で成功した広報」をそのまま自治体へ持ち込んでも、うまくいくとは限りません。
それでも、本質は共通している

一方で、自治体広報にも企業広報にも共通している大切な考え方があります。
今回の講義で一番お伝えしたかったのは、
「何を発信するか」ではなく、「誰の認識や行動をどう変えるか」から考えること。
ということです。
広報というと、どうしても
「プレスリリースを書く」
「SNSで発信する」
「広報誌を作る」
といった”手段”から考えがちです。
しかし、本来広報とは、
「誰に、どのような変化を起こしたいのか」
を考え、そのために必要なコミュニケーションを設計する仕事です。
講義では、この考え方を「コミュニケーション設計」というフレームワークに整理し、受講者の皆さんにご紹介しました。
自治体の実践事例を読み解く
講義の中では、東京都武蔵野市と岐阜県飛騨市の広報事例も取り上げました。
どちらも高く評価された事例ですが、私が紹介したかったのは「受賞した」という点ではありません。
なぜその広報が成果につながったのか。
コミュニケーション設計の視点で読み解くと、
- 誰の行動を変えようとしたのか
- その人は何を考えていたのか
- だから何を伝えたのか
- なぜその手法を選んだのか
という設計思想が見えてきます。
広報は「情報発信」の仕事ではなく、「人の認識や行動を変える設計」の仕事であることを、受講者の皆さんと一緒に考える時間になりました。
後半はワークショップ形式で
後半は、実際にコミュニケーション設計シートを使ったワークショップを実施しました。
受講者それぞれが自身のテーマを持ち寄り、
- 目的
- 誰に
- インサイト(本音・心理)
- 伝えること
- 接点
- 測定方法
を整理しながら、小さなコミュニケーション設計を体験していただきました。

講義を聞くだけではなく、「自分ならどう設計するか」を考えていただくことで、より実践的な学びにつながったのではないかと思います。
講義後の交流も楽しい時間でした
講義終了後には、受講者の皆さんともお話しする機会がありました。
共通の知人がいたり、以前関わったプロジェクトの話になったり、「こんなところでつながるんですね」という場面が何度もあり、改めて人のご縁の面白さを感じました。

最近は自治体や行政分野のお仕事は以前ほど多くありませんが、こうして現場で活躍されている皆さんと意見交換できたことは、私自身にとっても非常に刺激的な時間でした。
またご縁があれば、自治体や行政の皆さんと一緒に、政策を前に進めるコミュニケーションについて考え、実践していければと思っています。
最後に
このような貴重な機会をいただいた稲継裕昭先生、WASEDA NEO事務局の皆さま、そして熱心に参加してくださった受講者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
私自身も、多くの気づきと学びをいただいた一日でした。
これからも、企業・自治体を問わず、「広報は何を発信するかではなく、誰の認識や行動をどう変えるかを設計する仕事である」という考え方を大切にしながら、さまざまな現場で実践を続けていきたいと思います。
イベント・カンファレンス支援のご相談はkipplesへ
イベント・カンファレンスの企画から運営まで幅広く支援しています。サービス詳細・お問い合わせはこちら →

日比谷尚武(ひびや なおたけ)
合同会社kipples 代表 / PRコンサルタント
慶應SFC卒。Sansan株式会社などを経て2016年kipples設立。スタートアップから上場企業・行政機関まで、広報・P R戦略の立案から実行支援まで幅広く手がける。







