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PRの仕事は、どう評価され、未来に残るのか――ACC PR部門×PRアワードの鼎談レポートを寄稿しました

日本パブリックリレーションズ協会の広報委員として、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのPR部門とPRSJのPRアワード、それぞれの審査委員長による鼎談のレポートを寄稿しました。

登壇したのは、ACC PR部門の審査委員長を務める伊東由理さんと、PRアワードグランプリ2026の審査委員長を務める田上智子さん。聞き手は、博報堂の嶋浩一郎さんです。

鼎談では、カンヌライオンズの事例を振り返りながら、二つのアワードの違い、PRにおけるクリエイティビティ、そしてこれからのPRパーソンに求められる力について、話が広がっていきました。

レポートを書きながら、私自身が特に気になったのは、「勇敢さ」と「関係性」の話でした。

鼎談は、2026年のカンヌライオンズを振り返るところから始まりました。

二つのアワードは、似ているようで照らす場所が違う

ACCのPR部門とPRSJのPRアワードについて、みなさまご存じでしょうか?
どちらも優れたPRの取り組みを評価するものです。

ただし、それぞれの評価の視点は異なります。

ACCのPR部門はクリエイティビティを軸に、PRの領域がどこまで広がっていくのかを見ていく賞です。

今回は、「その手があったか」「なぜそれか」「何が生まれたか」という三つの視点から、PRのクリエイティビティを捉えたとのこと。

従来のPRの枠に収まらない取り組みに対しても、「これもPRなのか」と問いながら、社会の価値観を変える新しい方法や、関係性のつくり方に光を当てています。

一方のPRアワードは、目を引くキャンペーンだけでなく、行政や地域、インターナルコミュニケーションなども含め、パブリックリレーションズの幅広い実践を対象としています。

華やかな企画だけでなく、長い時間をかけ、関係者と対話しながら積み重ねてきた活動も評価する。PRという仕事の振れ幅を、広く捉える賞です。

この二つのアワードが、それぞれの視点を持って存在していることが、日本のPRにとって意味があるのだろうと思います。

一方で、両者に共通していたのは、単に話題になったかどうかだけではなく、なぜその企業や団体が取り組んだのか、誰を巻き込み、どのような関係をつくり、結果として何を変えたのか を見ようとしている点でした。

目に見える表現だけではなく、その背景にある判断やプロセスも含めて評価する、ということです。

両アワードの特徴の比較(あくまでも日比谷の解釈です)

「賢明な勇敢さ」と、関係性を編むクリエイティビティ

田上さんが、今年のPRアワードのテーマとして掲げていたのが「Wise Bravely(賢明な勇敢さ)」です。

「勇敢さ」というキーワードからは、「大胆な企画を提案し、リスクを取って一気に前へ進むこと」を想像するかもしれません。

しかし、鼎談で紹介された事例を伺っていると、ただ大胆であればよい、という話ではありませんでした。

たとえば、輸送中のKitKatが大量に盗まれるという危機に対応した、ネスレの事例です。

詳細は記事をご覧いただきたいのですが、同社は最初から攻めた施策を行ったわけではありません。まずは少しユーモアを含んだ発信を行い、生活者の反応を確かめる。その反応を材料に社内の合意をつくり、次の施策へ進んでいきました。

  • まずは小さく始める。
  • 生活者の反応を確かめ、社内外の不安をほどきながら、次の一歩へ進む。
  • 大胆だけれど、無謀ではない。

そのプロセスまで含めて「賢明な勇敢さ」と呼べるんだよな、と思いました。

ぶっちゃけ、広報の現場では、大胆なアイデアを思いつくこと以上に、それを実現できる状態をつくる方が難しかったりします

誰に、どの順番で話すのか。反対意見をどう受け止めるのか。どのタイミングで仕掛けるのか。社外の反応を、社内の巻き込みにどう活用するのか。

これらの調整に困難が生じがちですよね。


そして今回、もう一つ印象に残ったのが、PRのクリエイティビティは、完成した表現や企画だけに宿るものではない、という話です。

  • 人と人、企業と社会の関係をどう設計し直すのか。
  • 異なる立場の人たちを、どう同じ場に巻き込むのか。
  • 当初のアイデアに固執せず、反対意見を取り入れながら、
    より多くの人が参加できる形へどう修正するのか。

そうした「関係性の設計」にも、「その手があったか」と思わせるクリエイティビティがあります。

広報は、情報を発信するだけの仕事ではありません。社会との対話を通じて、自分たちの考えや方法を調整しながら、前へ進む仕事でもあるのでしょう。

この柔軟さと、それでも踏み出す胆力。その両方が求められている、ということなのかもしれません。

エントリーは、過去の仕事を未来の資産に変える

鼎談の終盤では、アワードに参加する意義についても語られました。

アワードというと、どうしてもどうやって受賞するかに目が向いちゃいます。

もちろん賞を取ることには価値があります。ただ、エントリーする過程そのものにも、かなり大きな意味があります。

  • 自分たちは、何を課題だと考えたのか。
  • なぜ、その企業や団体が取り組む必要があったのか。
  • 誰を巻き込み、どのような反対や障壁を乗り越えたのか。
  • そして、その結果、社会や事業にどんな変化を生み出したのか。

日々の仕事のなかでは、一つひとつの判断を改めて言葉にする機会は、意外とありません。

エントリーシートを書くことで、分散していた経験や意思決定が整理され、組織の知見として残っていきます。

鼎談のなかで伊東さんは、アワードへのエントリーを「過去の実績を未来の資産に変える行為」と表現していました。とてもよい言葉ですよねぇ。

派手なキャンペーンでなくても構わない。

行政や地域、社内のコミュニケーションを地道に変えた取り組み。多くの関係者と対話しながら、何とか前へ進めたプロジェクト。実施した時には必死で、まだ十分に言語化できていない仕事。

皆さんの周りにも、そういう取り組みがあるのではないでしょうか?

PRアワードは、そうしたパブリックリレーションズの幅広い実践に光を当てる賞です。
心当たりがあれば、ぜひエントリーを検討してみてください!

鼎談の詳しい内容は、こちらの記事にまとめました。ぜひご覧ください!

https://prsj.or.jp/pick-up/accxpraw2026/

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日比谷尚武

日比谷尚武(ひびや なおたけ)

合同会社kipples 代表 / PRコンサルタント

慶應SFC卒。Sansan株式会社などを経て2016年kipples設立。スタートアップから上場企業・行政機関まで、広報・P R戦略の立案から実行支援まで幅広く手がける。