「露出テクニック」よりも大切なこと。スタートアップ60社の「広報のモヤモヤ」を覗いてみたら。 〜 NEXs Tokyo第8期「広報・PR戦略」セッションレポート

東京都が運営するスタートアップ支援事業 NEXs Tokyo の連携事業創出プログラム第8期で、「広報・PR戦略」をテーマにしたワークショップを担当してきました。
連携事業創出プログラム|アクセラレーションプログラム | 【東京都主催】地域・業界・業種を超えるスタートアップ支援事業「NEXs Tokyo」
今回特に面白かったのが「事前のアンケート」なんです。 参加するスタートアップの皆さんから60件ほどの回答が集まったんですが、これを読み込んでいくと、みんなが抱えている「モヤモヤ」の正体が、結構はっきりと浮かび上がってきまして。
当日は、僕が一方的に話すというより、その「問い」に巻き込まれながら、一緒に答えを探していくような時間になりました。 そこで見えてきたリアルな悩みと、僕なりの回答を少しシェアさせてください。
事前アンケートで見えた、みんなの「リアルなモヤモヤ」

アンケート項目はいろいろあったんですが、ざっくり集計してみると、特に関心が高かったのはこの4つでした。
- 広報の戦略はどう作るべきか?
- どう組織化すべきか? どんな人を広報担当にすべきか?
- 広報の評価方法は?
- 広報の予算はどれくらいかけるべきか?
これ、意外じゃないですか? いわゆる「メディア露出のテクニック」とか「プレスリリースの書き方」よりも、戦略・組織・評価・お金といった、“経営のど真ん中”に近いところへの関心が圧倒的に強かったんです。

自由記述の欄にも、かなり濃い問いが並んでいました。
- 「社会的意義(研究など)」と「事業性(ビジネス)」を、どう両立させて語ればいいのか?
- 代表個人の専門性と、企業ブランドをどう整理して発信すべき?
- どのタイミングで専任を置き、どこまで外注し、いつ内製化していくべきか?
つまり、みんな「とりあえずバズりたい」なんて安易なことは考えていない。「事業のフェーズやステークホルダに合わせて、広報をどう設計すべきか」という、非常に本質的な相談が多かったのが印象的でした。
当日のセッションはアンケートから逆算
そんな背景もあったので、当日の構成は予定を変更して、いつもより「経営と広報のつながり」に振り切って組み立ててみました。この方が役に立つなと思ったので。
① そもそも広報とは? 毎度のネタですが、「Public Relations」という言葉の通り、「ステークホルダとの関係づくり」という原点に立ち返る話です。 「広告っぽいことをするキラキラした部署」ではなく、「事業のまわりにある関係性をデザインする役割」として捉え直しましょう、という整理をしました。
② 広報の戦略とファネル設計 認知から関係構築までのファネルをざっくり描きつつ、「どの段階でどんなPR施策が効くのか」を解説しました。 いきなり日経新聞や全国紙を狙うのではなく、まずは小さく始める。ローカルメディアやコミュニティとの連携など、身近な「仕掛け」の話も。
③ 組織と体制づくりのリアル 「誰に広報を任せるか」「兼務で始める時の注意点」「外部パートナーとの組み方」など、アンケートで票の多かったテーマをまとめて議論しました。 スタートアップの場合、「採用・コミュニティ・広報」をごちゃ混ぜにして同じチームで見ている例も多いですよね。そのあたりのリアリティも踏まえて。
④ 評価と予算:どこから“ちゃんと”やるか? ここ、一番悩みますよね。数字だけでは捕まえきれない「関係性の変化」をどう評価するか。 とはいえ、経営とつなぐためには、どこかで指標やKPIも必要になる。 予算についても、「メディア露出の本数」を買うのではなく、「事業のボトルネックを解消するための投資」として考えてみませんか? という提案をしました。
「いいことをしている」だけじゃ届かない? 社会課題系特有の悩み
今回の参加企業(JUMP/DIVE採択企業)のリストを見ると、モビリティ、教育、カーボンクレジット、産業DX、ウェルビーイングなど、かなり幅広い分野が混ざっていました。
なかでも、自治体や大学と組んで社会課題に向き合うタイプの事業からの問いが目立ちました。 「公共性の高いテーマを扱いつつ、きちんとビジネスとしても成立させたい。その両方をPRでどう表現するのか?」
これ、僕自身もここ数年いろんな地域でご一緒する中で、毎回ぶつかるテーマです。 社会性が強いほど、「いいことをしている会社」としての共感は得やすい。でも、それだけだと「応援」で終わってしまって、事業としての持続性やスケールの話に届かないんですよね。

だからこそ、 「何の課題に、どのステークホルダと一緒に取り組んでいるのか」 「その結果、誰の行動がどう変わると、どんな未来が描けるのか」の定義が大事。
ここまでセットで語れるかどうかが、コミュニケーション設計のポイントだなと、改めて感じました。
ワークと対話から見えてきた「言語化」の壁
後半は、参加者の皆さんの事業を題材に、「誰に/どうしてほしい/どこで伝えるか」を一緒に整理するミニワークを行いました。
- 投資家や金融機関に向けたメッセージ
- 自治体職員や議会への説明
- 現場のユーザー(市民・生活者)へのストーリー などなど
すぐに整理できた方もいましたが、今までこのような整理をしたことがなくて苦戦している方も多かった様子。

同じ事業でも、ペルソナが変われば語るべきポイントもガラッと変わりますよね。 ワークを通じて、個人的に一番印象に残ったのは、こんな声でした。
「広報担当を採用する前に、経営陣の頭の中にあるストーリーをもう少し言語化しなきゃダメですね…」
そうなんです。結局、そこに行き着くんですよね。
これから広報を始めるスタートアップへ
今回あらためて感じたのは、広報の悩みの質が変わってきているということです。 「どう露出を増やすか?」というテクニック論から、「事業とどうつなげるか?」という経営論へ。
そして、それを考えるためには、机上の空論で戦略を練るより、ステークホルダと対話しながら、自分のストーリーをアウトプットしていくことがやっぱり重要です。
あなたの事業では、いま 「誰との関係をつくりたいですか?」 「その人に、まずどんな“小さな行動変化”を起こしてほしいですか?」 「それを、どのチャネルから試してみますか?」
このあたり、どこまで言語化できているでしょうか。 まずは小さく、たった1人のステークホルダに対してでも良いので、「誰に/どうしてほしい」を一枚のメモに書き出してみるところから始めてみるのも良いかもしれません。







