「POTLUCK FES ’26 Spring」登壇記:地域の話に首を突っ込む「資格」なんて、最初からなくてよかった。

この数年、地域活性化の話題が増えていると感じるのは、自分の気のせいでしょうか。
かつて自分は、地域の話に関わる資格はないと考えていました。都会生まれ育ちであり、当事者性がないこと。多くの方々が本気で地に足をつけて取り組んでいるなかで、ちょっと好奇心が湧いたからといって首を突っ込むのは、ファッション的で申し訳ないと思っていたからです。
でも、独立してこの10年、時間に自由が利くことを武器に、日本各地の取り組みやキーパーソンを訪ねて回りましたが、その魅力に取り憑かれるばかりです。今では月に2、3カ所はいろいろな地域を訪問しています(クラフトビールの事業をはじめてしまったことも大きいのですが)。

ローカルフラッグ濱田さんによる記念ビールの紹介の様子。
POTLUCKにも、ほぼ毎回足を運んでいました。当初は勉強する場だと思っていましたが、だんだん当事者意識が出てきたわけです。そしていよいよ縁あって、「POTLUCK FES ’26 Spring」に登壇することになりました。
セッションのテーマは、『真剣だからこそ、遊び心を。社会を動かす「しなやかな革命」』。
小國士朗さん、長谷川琢也さん、古川理沙さんという、それぞれの現場で活動を続けている3人と対話してきました。
「あえて」手放した設計図
登壇者同士のメッセージのやりとりが始まったとき、モデレーターである私からの「頭出し」はあえてしませんでした。話が得意な皆さんだということは分かっていましたし、無理に型にはめる必要はないなと。
ただ、そうは言っても、自分用の予習や構成検討にはかなりの時間を割いていました。皆さんのプロフィールや最近のメディア露出を確認し、「共通のポイントはどこか」「どんな課題を投げたら盛り上がるか」と、自分なりに情報を整理していたのです。

聞きたいことがたくさん見つかった!
小國さんは、以前理事が務めていたat Will Workのカンファレンス以来、その存在をよく知っていました。今回は基調講演も務められるとのことで、開会と同時に会場に飛び込み、内容をしっかり予習。そこでまた新しい問いが自分の中に生まれてしまいました。
古川さんについては、ローンディール創業者の原田さんからその活動の深さを伺っていました。長谷川さんも、昨年石巻を訪問した際に現地のことを調べていて、彼の記事にぶち当たった記憶があります。
いずれの皆さんにも興味があり、聞きたいことが山ほどある。そんな状態でステージに立ちました。
予定調和を捨てる勇気
ところが、いざ幕が開いてみると、話は予想もしなかった方向へ転がっていきました。

冒頭こそ、「人の巻き込み方」や「マネタイズをどこまで重視するか」といった話題を振ってみたものの、皆さんの話が面白く、すぐに話の輪は広がっていきました。
「あえて、台本をなぞるのをやめよう」と。
手元の構成案を脇に置きました。

中盤、長谷川さんが場を回しはじめてくれたので、安心して流れを見守りつつ、会場からのサインを拾うことに専念しました。

質疑応答では、ウェブのアンケートに書き込んでくれた大学生の彼女に、直接マイクを渡して対話してもらうことにしました。そこから場にインタラクティブな空気が生まれたのは、とても良かったと感じています。
「素人」の視点が持つ可能性
予測不能な対話のなかで、特に印象的だったのが「素人の強さ」というキーワードです。
- 「魚に興味がない漁業の変革者」(長谷川さん)長谷川さんは、実は釣りが好きでもなければ、魚の鱗や生臭さも苦手で、もともと魚には興味がなかったのだそう。そんな「素人」が石巻に飛び込み、現場の人たちをリスペクトしながら15年も活動を続けてきた。これは、基調講演で小國さんが語っていた「素人が強い」というメッセージにも通じます。専門家ではないからこそ持てる視点があるのだと、改めて感じました。
- 「遊び」が学びを駆動する(古川さん)古川さんが語った、ある園児たちのプロジェクトも印象的でした。彼らは「バス旅行に行くためにお金がかかること」を自ら調べ、その資金を稼ぐために定期的に食事会を開催したそうです。地域の人や親を呼び、メニューも値付けも自分たちで決めた有料の食事会。自分たちのやりたいこと(遊び)のために知恵を絞る。この構造は、大人のプロジェクトにも通じるヒントがあります。
- 「コンテンツ」としての課題解決(小國さん)課題をそのまま出すのではなく、みんなでおもしろがれる「コンテンツ」へと昇華させる。そうすることで、専門外の人たちも自然と巻き込まれていくのではないか。小國さんの話を聞きながら、そんなことを考えていました。
好奇心の先に宿る「当事者性」
セッション終了後、質問してくれた大学生の彼女が挨拶に来てくれました。なんとSFCの1年生。後輩としてさすがだなと感じましたし、こうした若者にもっと活躍の場を提供できたらいいな、と。
今回のセッションを通じて改めて感じたのは、3人が単に「楽観的」なわけではないということです。
話の端々から伝わってきたのは、それぞれが抱える想いや、現場での泥臭い試行錯誤。決して楽な道ではないはずです。それでもなお、彼らが「楽しもう」というスタンスを貫き、そう発信し続けているのは、そうでないと新しい参加者は増えないし、何より自分たちの活動が持続しないことを知っているからなんだろうな、と。
自分の学びとしては、、「気軽に地域の話に首を突っ込んじゃいけないんじゃないか」というかつての自分の思いは、やっぱり間違いだったな、と。
どんどん好奇心に沿って飛び込んで、そこから少しずつ当事者性を育てていく。3人との対話から伝わってきたのは、そんな「しなやかな」関わり方の肯定でした。
これからも自信を持って、フラフラと各地に足を運ぼう。



セッションの余韻を感じながら懇親会を徘徊する中で、そんなことを思ったのでした。
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日比谷尚武(ひびや なおたけ)
合同会社kipples 代表 / PRコンサルタント
慶應SFC卒。Sansan株式会社などを経て2016年kipples設立。スタートアップから上場企業・行政機関まで、広報・P R戦略の立案から実行支援まで幅広く手がける。







